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2016年5月13日

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【後編】ドバイ・ショックとは何だったのか~経済危機から見るドバイの底力

2000年に86万人だった人口は、ドバイ・ショックをはさみ、2010年には190万人へ。2016年現在、250万人へと過去15年間で驚異的な増加を達成している。ドバイ国際空港の利用客数も毎年伸び続け、2010年に4700万人だったのが、2015年には7800万人まで増えている。50年前に中東の地方空港に過ぎなかったドバイ空港は、外国人利用客数で世界一位の座についている。

 

dubai_airport

ドバイ・エアポートの様子

 

ドバイの航空産業及びドバイへの人口流入をけん引するのが、昨年30周年を迎えたエミレーツ航空だ。世界144都市を結び、5千万人の乗客を運ぶドバイの翼は、1985年、パキスタンから借りた中古の機体2機で開業した。それから30年、A380を59機、B777を144機保有する世界最大の航空会社になることを、誰が想像しただろう。

 

Emirates_logo

 

空のハブ化は、7000社の企業を誘致するジュベル・アリ経済特区及びシンガポール以西最大の港湾であるジュベル・アリ港とともに、ドバイ発展の要諦を成し、海外からのヒト・モノ・カネの往来を可能にしている。

 

ところで、エミレーツ航空は、中東地域においてもう一つ重要な役割を果たしてきた。あくまで私見だが、それは、9・11後のアラブの名誉の回復である。

 

2001年9月11日にアメリカで発生した同時多発テロにより、イスラム教及びアラブに対する世界的なイメージは失墜した。04年のマドリード、05年のロンドンのテロなどとも相まって、イスラム教やそこから派生するアラブに対するイメージは著しく悪化した。米国へのアラブ人留学生は、学内での敵対的発言や、ひどい場合、暴力の対象となることから居場所を失い、道半ばで国に帰るものも少なくなかった。

 

その中において、早くから世界に対し市場を開放し、外国人受け入れを促進することにより、アラブのセーフ・ヘイブンとしての役割を担ってきたドバイ。すでに、70都市以上に就航していたエミレーツ航空は、ドバイのフラッグシップ・キャリアとして、ドバイ経済以上の物を背負っていたと私は思っている。

 

04年に英プレミアリーグの強豪アーセナルとスポンサー契約を結び、その後、ACミラン、レアルマドリードなど、世界の名だたるサッカーチームのスポンサーとなり、ユニフォームの胸に、特殊フォントでFly Emiratesと印字したのは、経済的な宣伝効果のみならず、むしろ、それ以上に、アラブの連帯を体現し、9・11後に疲弊したアラブに対するイメージの回復を目指し、語られぬテーマを秘め先陣を切った投資行動ではなかったか。

 

ドバイ・ワールド傘下のDP Worldが06年に英港湾管理会社P&Oを買収した際に、P&O管理下にあった米国の港湾管理を巡って、米国議会から激しい反発が起こった。国の玄関である港湾を、テロを起こしたアラブの企業に任せることはできぬと。

 

こうした容易に拭い去れないイメージを払拭すべく、エミレーツ航空は、Fly Emiratesを世界で最も目につき、サッカーを愛する子どもたちの憧憬の行く末に並べることで、ドバイの安全性と歴史深きアラブ世界へのゲートウェイ道しるべとしての役割を果たしてきたのだ。

 

20年間、エミレーツ航空のマーケティング部門に勤めた英国人は、ロンドンを訪れた際に乗ったタクシーの運転手に「アーセナル・スタジアムへ行ってくれ」と頼んだ。すると運転手は「エミレーツだな」と答えた後に、続けてこう言った。

emirate

 

 

「先日、エミレーツ航空に乗ってドバイに行ったよ。ゴルフをしたんだ」

 

ロンドンで発せられた「アーセナル」という単語が、エミレーツやドバイを瑕疵なく紐づけたのだ。これこそが、9・11後の世界において、エミレーツが目指していたものではなかったのか。左右に広がった鉄の翼の上に、彼らが背負っていたアラブの名誉を取り戻す大きな一歩であったのだ。

 

そして彼らは、ドバイ・ショックで訪れた新たな危機にも、高みを目指す流線型の鼻翼と、軽快なテイクオフで、道程不安な雨雲からの脱出に一役も二役も買ったのである。

 

ドバイ・ショックを一蹴した冒頭の男は、相変わらず、しわひとつない東洋紡のカンドゥーラをまとっていた。久しぶりの邂逅に際し、何事もなかったかのような恬淡な笑顔で、私の下手なアラビア語の挨拶に答えた。ドバイ・ショックが、どの程度、個人を「現実的に」したのかは分からない。ただ、時計の針は、約束の時間の5分前を指していた。

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